「ケータイを買い替えたいので、ちょっと一緒にみてほしい」 という実家からの電話。
ドコモ 〔N502i〕。
僕が最初に持った携帯電話で、その後、父に譲り、今日までちゃんと電話機としての機能を果たしてきた。
めまぐるしく移り変わるケータイ事情の流れの中で、父は泰然として、
「まだ使えるから」
という、極めて明快な理由によって、かれこれ十年近く、使い続けたことになる。
今ではスタンダードとなっている “二つ折り” も、当時はまだ珍しかった。
たたんで握った時の、手のひらの中での収まりの良さ。丸みを帯びた、温もりを感じさせるデザイン。必要にして十分な大きさのモノクロ液晶画面や、キーボタンの押し心地に至るまで、実に使い勝手の良い “名機” であった。
まだ使おうと思えば使えるこのケータイを、父が買い替える気になったのは、ショップの店員さんの熱心な勧めによるものらしい。
企業が、投入した新しい商品を、次から次へと買い替えてくれる “消費者” を必要としているのはわかるが、ひとつの製品に愛着をもって長く使い続ける、善き “顧客” の存在もまた、認めてあげて欲しいと思う。
新しいケータイを手にした父は、それはそれで嬉しそうではあったが。