マンションの、僕の部屋のちょうど真上の住人が、知らぬ間に引っ越していて、知らぬ間に新しい人が入居していた。
挨拶に来られて、おいしい焼き菓子を頂いたので、さっそくコーヒーを淹れて、それを食べながらのんびりしているうちに、あっという間に午前中が過ぎ去ってしまう。
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「親孝行は、して、し過ぎることはないからね…」 と、しみじみ忠告してくれた人がいて、めずらしく殊勝な心持ちになり、カーネーションを一本買って、実家に顔を出す。
やり慣れないことをしたものだから、なんとなく居心地が悪く、出されたコーヒーを飲んで、そそくさと退散してきたのだが、母は驚きつつも、まあ、喜んでくれたようだ。