長野でブドウ農園をはじめた友人がいるという話は、
前に書いた。
脱サラをして、ほとんどゼロから農業を覚え、三年目を迎えてようやく経営も軌道に乗り始めたそうだが、なんといっても働き手が夫婦二人、繁忙期にはやはり、人手が欲しいというのが本音のようだ。
そこで胡乱亭、昨秋は、収獲と出荷を終えた頃を見計らって観光気分で訪問したのだが、今年はこの連休を使って、いっちょ畑仕事を手伝ってみようじゃないかということになり、はりきって出かける準備をしていた。
ところが…
現地では、十日ほど前、突如激しいひょうに見舞われ、順調に育っていたはずのブドウが、壊滅的な被害を受けてしまったとのこと。専業農家である友人一家にとって、事態はかなり深刻だという。
それを聞いて、それこそ 「何か手助けを…」 と、こちらの気は逸るばかりであったが、さすがに友人は冷静に状況を判断し、「いまはとても、手伝ってもらえる状態ではないから…」 と、逆に訪問の延期を求めてきた。
広い敷地に実りつつあるブドウの房を全て調べ、傷のついていない果粒をひとつひとつ選り分けてゆくのだそうだが、その見極めが、なかなか難しいという。
人手が必要であろうことは、想像に難くない。歯を食いしばってリカバリーに努めている友人のことを思うと、居たたまれない気持ちになるが、とはいえ、わけもわからぬ素人がウロウロして、かえって作業の足を引っ張るようなことになってもいけないと思い、ここは、プロとして農業をやっている友人の言葉に、素直に従うことにした。
「落ち着いたらまた声をかける。そのときこそ応援よろしく」 とのメッセージが届く。
一日も早くその日が来ることを、願わずにはいられない。