駅の改札を通るとき、改札機に PASMO のチャージ残高が表示されるのだが、タイミングによって、自分の前を通過した人の金額が、ちらっと目に入ることがある。
5,000円くらい入っていると 「お、この人すごいな」 と思う。10,000円以上も入っていようものなら、たとえばそれが、よれよれのスーツを着た疲れたサラリーマン風のおっちゃんだったとしても、「ひょっとしたらこの人、どこかの社長さんかも・・・」 なんて、ちょっと見る目が変わっちゃう。それで、そのあと通った自分の残金が 『308円』 などと表示されると、妙に情けない気持ちになる。
ちっとも情けなくなる必要なんかないんだけど、見栄っ張りなもんだから、なけなしの小遣いをはたいて、3,000円くらいまで戻しておく。
*
いま、通勤電車の中で 〔壇蜜日記〕 を読んでいる。あのタレントの壇蜜さんの日記である。いかにも彼女らしい、しっとりとした世界観が、見事に文章で表現されており、意外な文才と知る。
なんら恥ずべき本ではないのだが、世間にはイメージというものがあって、『電車の中で壇蜜を読む中年男の図』 というのは、どちらかというと 「引く」 部類に入るのではないだろうか。
もしも、通勤途中に何らかの事情で持ち物検査でもするハメになったとして、カバンの中から 〔壇蜜日記〕 が一冊だけぽろっと出てきたりしたら、やっぱりちょっと恥ずかしいので、カモフラージュ的に、井伏鱒二とか、池波正太郎とか、別の小説も二冊くらい一緒に持ち歩いている。著者には大変失礼な話だが、四十半ばのオッサンの、つまらぬお体裁だと思って、ご容赦願いたい。
*
仕事で面白くないことがあって気分がささくれ立っていた日の、帰りの電車内。
ドアの前で、イヤフォンをした年配の男性がスマートフォンの動画を見ていたのだが、駅に着いて、ドアが開いても、そこに立ったまま動こうとしないので、思わず 「どけよ」 と言いそうになる。言わなかったけど。
「すみません」 と小声で言って、肩でちょっと押しのけるようにして、降りる。その際、キッと顔をにらんでやったのだが、そ奴は僕の精一杯のアピールなどこれっぽっちも気づくことなく、ただもう夢中で画面に見入っている。
ここまでくると、アッパレだ。
彼とスマートフォンとの間に流れる幸せな時間を邪魔するのも野暮だと思い、今回は負けておく。
*
あーあ、ホントだったら今ごろ蔵王で温泉につかっていたのになあ。
誘ってくれた人がいたのだが、マンションの管理組合の会合と重なってしまったので、泣く泣くあきらめた。
で、こんなどうでもいいコトを書きなぐっている。