久しぶりに映画のハシゴ。渋谷にて 「敵こそ、我が友 ~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~」 と、「落下の王国」。
前者は、第二次世界大戦とその後の冷戦という時代の中で、国家間の思惑に翻弄されつつも、したたかに生き延びてきたひとりの男の生涯を、本人も含む多くの証言によって綴ってゆくドキュメンタリー。
ナチス親衛隊 (ゲシュタポ) として、多くのユダヤ人虐殺にかかわってきたクラウス・バルビーは、戦後、アメリカの情報機関に雇われて対ソ連スパイ活動を行い、さらに南米・ボリビアに渡り、軍事政権樹立の立役者となる。
戦犯として裁かれるべき人間が、国家により重要人物としての地位を与えられ重用されてきたという、その事実。1991年に癌で亡くなるまでの半世紀近く、戦後世界の矛盾を一身に背負ってきたその男の瞳の奥には、しかし、悲壮感はない。己の才覚ひとつで生き抜いてきたという、不敵な自信のようなものさえ垣間見える。
こんな人間もいるのだ。それ故、世に映画のタネは尽きることがない。
後者は、近年稀に見る映像美で魅せる、壮麗なファンタジー。
CGやセットを駆使した斬新な映像も嫌いではないけれど、この映画におけるロケーション撮影の効果は、ちょっと鳥肌ものだった。
世界中の美景、絶景、奇景が次々とスクリーンに映し出され、石岡瑛子氏による、奇抜ではあるが格調高い衣裳がまた、これらの風景によく溶け込み、情感あふれる音楽と共に、物語を盛り上げる。映画館で映画を観る醍醐味を、存分に味わった。
「落下の王国」 という邦題も、可愛げがあって良い。
この監督 (ターセム) ならば、古川日出男の 「アラビアの夜の種族」 を映画化できるかもしれない。
今日は2本とも大当たり。
映画の合間を縫って、〔JS BURGERS CAFE〕 で、ハンバーガーとアイスコーヒー。
本屋をのぞき、コーマック・マッカーシー 「The Road」 を買って、帰る。
コーマック・マッカーシー、どこかで聞いたことのある名前だと思っていたら、今年のアカデミー作品賞 「ノーカントリー」 の原作者であった。