天気が崩れるというので、早めに投票を済ませ、その足で買い物に行く。
旨そうなスルメイカが店頭に並んでいたので、思わず衝動買いをしてしまったのだが、買ったはいいものの、さてコイツ、どうやって喰ってやろうか…
こういうときはいつも、檀センセイに教えを乞う。書棚から、檀一雄 〔わが百味真髄〕 をひっぱり出してきて、パラパラとめくる。あったあった。
『 マドリッドのプラサ・マヨールだったか、「プルピトス」 と呼ぶイカ料理の店があり、ここではイカの全貌を墨やモツごと、ブツブツに切って、少量の葡萄酒にひたし、塩、胡椒、サフランの匂いをつけ、一挙にオリーブ油でいためるのである。
このとき、鍋の中に、ニンニク一粒、トウガラシ一個を入れていたが、あんなに簡単で、無駄なく、手早く、おいしい料理は、少なかろう』
とある。いかにも旨そうではないか。よし、これに決めた。
といっても、分量も写真も何もなく、ただこれだけの記述を頼りに、しかもサフランなんか無い。右往左往しながら、それでもなんとかできあがったその一品。自分で言うのもなんだが、これが、うまかった。
檀センセイ曰く、『誰でも一度はためしてみるがよい』。
全く、そのとおり。