飲み過ぎた。
明け方、頭痛がして目が覚め、起き上がった途端、おえっ、ときた。絵にかいたような二日酔いである。
シャワーを浴びて、ふたたびベッドに横になる。こんなとき、旅先で、なにか用事があるのだったらどうにもならないが、幸い、こっちにはなんの用もない。
お城に行こうか、熱田神宮まで足を延ばそうか、それとも東山の動物園にでも行ってみようか。相撲観戦もありかな。朝、ゆっくり、たっぷり、モーニングを食べ、昼は、味噌カツや、てんむすや、手羽先で一杯、なんてことを考えていなくもなかったけれど、すべて頭の中で考えていただけで、「しなければならない」 ことなど、なにひとつない。チェックアウトぎりぎりまで、ここで寝ていよう。
名古屋の夏は、暑い。午前十時の太陽はすでに高く、陽射しが、じりじりと肌を焦がす。酔った頭と胃に、紫外線が染み込んでくるようだ。。
宿を出て、商店街をぬけ、大須観音へ辿り着く、わずか十二、三分ばかり距離が、えらくしんどい。汗が吹き出し、足元がふらつく。ちょっと本格的に、やばい。
昨日入った 〔コンパル〕 にまた入って、冷たくて、さっぱりしたものが欲しかったので、クリームソーダを頼み、ひと息つく。
出てきたクリームソーダの色が真っ赤で、びっくりしたけれど、この時のアイスクリームの美味かったこと。すこし、生き返る。
結局、うとうとしながら、十二時過ぎまでこの店にいた。
頭痛は治まった。胃も少し落ち着いてきたが、まだ、なにか食べる気にはならない。味噌カツも、てんむすも、手羽先も諦めて、もう、帰ろうと思う。名古屋旅二日目は、喫茶店で赤いクリームソーダを飲んだだけで終わってしまった。
帰りは新幹線にした。一旦、自由席の切符を買うも、万が一座れなかった時のことを考えて怖気づき、指定席に切り替える。
お土産を買って、名古屋駅の構内をうろうろしていると、突然、モーレツに腹が減りはじめた。ようやく、酒が抜けたのだ。長年の経験により、僕の場合、この空腹感が二日酔い脱却のサインであることを知っている。こうなってくれば、回復は早い。
急いで、高島屋の地下へ降りる。惣菜売り場を足早にまわって、食べられなかった名古屋メシをあれこれと買い漁り、午後二時二十四分発のひかりに乗る。
指定席に座り、さっそく、味噌カツとてんむすを心ゆくまで堪能し、家に帰ってから、手羽先をどっさり皿に盛って、うみゃーうみゃーと、一杯やる。
なかなか、いい旅であった。