朝飯は、レトルトの 〔よこすか海軍カレー〕。すこしソースをたらして食べると、旨い。
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今日は映画の日なので、二本、ハシゴする。
まず、クリント・イーストウッド主演の 〔人生の特等席〕。少々野暮ったい邦題だが、出来はよかった。まるでフランク・キャプラの映画のよう、と言ったら褒めすぎかもしれないが、古き良きアメリカ映画 (ハリウッド映画とは呼びたくない) の伝統のようなものが感じられて、定番のストーリーながら、捨て難い味わいがあった。
イーストウッドが演じるのは、メジャーリーグのスカウトマン。頑固一徹で、腕はいいが、歳をとったせいで、最近なにかと巧くいかないことが多い。そんな父親を心配して、都会で弁護士をしている一人娘が様子を見に来るのだが…
近ごろの映画は、二時間の上映時間の中に三時間分の内容を盛り込もうとするせいで、自然と展開が目まぐるしくなり、消化不良に終わっていることがままあるのだが、その点この作品は、二時間かけて描くべき、父娘の齟齬と和解の物語を、二時間かけて、ちゃんと描いてゆく。
監督は、これがデビュー作となる、ロバート・ロレンツ。丁寧な、いい仕事をした。
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007シリーズには、“らしさ” が求められる。
ただアクションが凄いというだけではダメで、それだと 「面白かった。でも、007でなくてもいいんじゃない?」 と言われてしまう。
正直に言うと、前作、前々作と、僕もそういう感想を持った。硬派なアクション映画として、見ごたえはあったけれど、どこか007らしさに欠けているように思え、物足りなさを感じたものだ。
それでも新作が公開されるとなれば、やっぱり期待をして劇場に駆けつけてしまうのだが、結論から言えば、〔スカイフォール〕 は、こちらの期待をはるかに上回る、シリーズ屈指の出来ばえで、大いに溜飲を下げた。
「時代遅れのスパイ」 という、今年、五十周年を迎える古いシリーズであるということを逆手に取った設定が秀逸で、これによって、007らしいマンネリズムと、らしくない新味とが、物語の中で違和感なく混ざり合い、結果、新しい007の世界を構築することに成功している。
もちろん、オールドファンを喜ばせる演出もぬかりなく、アストン・マーチンが姿を現す瞬間など、まるであの 〔第三の男〕 における、ハリー・ライム登場シーンを彷彿とさせるような鮮やかさで、思わず快哉を叫びたくなった。
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劇場を出ると、陽はすでに落ち、街はイルミネーションで輝いている。そして、その雰囲気を台無しにしながら行き来する、選挙カー。なにはともあれ、もう師走だ。
寒いので、駅前の立ち食いで熱いうどんを啜ってから、帰る。