昨夜。晩酌をしたあと、ちょっと横になったらそのまま眠ってしまったので、朝、風呂に入る。頭を洗って、さて、次は体を洗わなくてはいけないのに、何故か、またシャンプーをはじめてしまった。ひとり、風呂場で苦笑い。
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長年、雨風にさらされてボロボロになっていたベランダのラティスを取っ払った。すっきりしたのはいいが、そのぶん、埃が目立つようになったので、朝飯前に、軽く掃き掃除をする。
室外機の下にクモの巣が張っていたので、これを箒で絡め取ろうとしたら、小さなクモが這い出してきて、「やめてー、壊さんといてー」 と訴えてくるので、格別の恩情をもって見逃がしてやることにする。
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朝飯は、ハムとピーマンを刻んで入れたスクランブルエッグに、トースト、コーヒー。
今日は夜、新宿で飲み会があるので、それまでは家で心静かに過ごす。
お茶を淹れて、本を読む。木内昇 〔漂砂のうたう〕。
時は明治維新から十年が過ぎた頃。舞台は根津の遊郭。時代に取り残された男たちの倦怠が渦巻く、吹き溜まりのような廓の中にあって、ただひとり、凛とした気概を保ちつづける遊女の姿が、硬派な筆致で描かれ、すごく、よかった。
先の見えない時代の、鬱々とした空気の描写が秀逸で、それはそのまま、我々が生きる現代の空気とも重なる。
読みながら、似たような情感を以前にもどこかで味わったことがあるんだけどな… と考えていたら、ああ、これは山中貞雄の 〔人情紙風船〕 だと、思い当たった。
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読後の余韻に浸っていたら、遅くなった。そろそろ出かける準備を始めなくては。