ミセスの伯父を病院に見舞って、その帰り、国道沿いの蕎麦屋に入る。
カレー南蛮が食べたかったのだが、白いセーターを着ていたので、あきらめて、鴨南蛮を注文する。車だったので、酒はなし。
サッと食べて、スッと出てこようと思っていたのだが、頼んだ蕎麦がなかなか出てこない。十分経ち、二十分が経過する。
こうして文字にすると、二十分くらい 「どうってことないだろ」 と思われるかもしれないが、蕎麦屋で、蕎麦が出てくるのを二十分待つというのは、なかなか忍耐のいることだ。一杯飲んでりゃ別だが。
混んで、立て込んでいるというのならわかるが、客は他に家族連れが一組いるのみで、格別忙しそうな様子でもない。
どこの町にもある、よく聞く名の蕎麦屋だ。作り方にこだわりがあって時間がかかっているとか、そういうたぐいの店ではないと思うし・・・
ちょっと、イラッとする。
でもまあ、今年は穏やかに過ごそうと誓ったばかりだから、ここはもうすこし我慢しよう。
意外と広い店なのだが、父ちゃん母ちゃんだけで厨房をまかなっている様子。従業員はお休みなのだろう。正月だというのにこうして店を開けてくれているだけでも、ありがたいと思わなくちゃ。
よし、三十分まで待とう。三十分待って出てこなかったら、「まだ時間がかかりそうですか?」 と、穏やかに聞いてみよう。そう心に決めて、それでも結局出てこなくって、三十五分まで待って、いよいよ、これはもう言わなアカンかな、言うよ、言っちゃうよ、いいかい、声かけちゃうよ・・・
喉元まで声が出かかったところで、「おまちどうさまでした」。
食べるのは、五分。