アカデミー作品賞を取るゾ取るゾと言われていて、期待がパンパンに膨らんでいたところで、結局、取れなかったことを知り、ハッと夢から醒めたようになって、膨らみ過ぎていた期待が急速に萎んでいった。
ただ、個人的には今回、それがよい方向に作用したと思う。過度な期待をせず、アカデミー賞という “レッテル” をはがして、フラットな気持ちで観ることが出来たから。
スケール感と躍動感にあふれたオープニングから、主演の二人によるロマンチックなタップダンス、甘悲しいピアノの調べ、そしてラストシーンの切ない余韻に至るまで、監督のデミアン・チャゼルは、最新の撮影テクニックを駆使して、古き良きミュージカル映画の世界を “再現” してみせる。
そのまま、最後にわぁーッと盛り上がってハッピーエンド、ということであれば、ハリウッド製エンターテイメントとしては文句なしだったのだろうが、そうしなかったところが、かえって、よかった。
まるでフランス映画のような、その、ほろ苦き 「味わい」 に、酔う。