好い天気。
どこにも出かける予定はないけれど、ちゃんと着替えて、ひげも剃って。
油断すると一日中、寝間着姿で過ごしてしまうことがあって、ミセスに度々注意される。
明るいうちから飲む酒の味にしたって、だらっと飲むのと、シャンとして飲むのとでは、変わってくるからね。
ま、最初の一、二杯は、の話だけど。
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〔オリエント急行殺人事件〕 からの列車つながりで、もう一つ。
先日、会社帰りの電車の中でのこと。隣に座っていた白人の若い女性が、突然、バッグの中から一本のニンジンを取り出し、それをかじり始めた。皮も剥いていない、それこそ八百屋で買ってきたばかりのような、丸ごと一本の生のニンジンをだ。
貧しさからくる行動でないことは、すぐにわかった。服装も持ち物もシンプルだが上品なもので、決してみすぼらしい感じではなく、ただ当たり前の食習慣としてそうしているだけ、というふうに見えた。
最初は驚いたが、スマートフォンの画面を眺めながら、時々カリッといい音をさせてニンジンをかじっているその仕草がとても自然で、だんだん、その姿が好ましく思えてきた。エレガントですらある。真似してみたい。
で、同じことを僕がやったらどうだろう、と想像してみる。
だめだ。ただの 「ニンジンをかじるオッサン」 だ。まるで画にならない。
下手をすると、こっそり動画に撮られて YouTube かなんかにアップされて世間の笑いものになるか、迷惑行為として炎上して逮捕されて厳重注意あるいは罰金なんてことにもなりかねない。
悲しいかな、人は見た目で判断される。やっぱりこれは、白人の若い女性じゃないと格好がつかないようだ。いくら差別だ、偏見だと騒いでみたところで、こりゃ、まあ、仕方ねえや、と思う。
オッサンにはオッサンの立ち位置がある。それを踏み外さないように生きていこう。