昨日今日と出社して、慌ただしく会社の移転をする。
本当は、昨年の秋には引っ越しが完了しているはずだったのだが、いろいろあって今日まで延び延びになっていた。
創業四十五年。社員わずか十名ほどの超零細企業ながら、新社屋を自前で建てられたことは、まあ、自慢していいと思うし、取引先の人たちも 「このご時世に大したもんだ」 と褒めてくれる。
しかしながら、その誉め言葉を真に受けて、手放しで喜んでいられるかというと、そうでもない。
決して景気よく儲かっているわけではなく、今はどうにかやってこられているというだけで、ひとつ歯車が狂ったら一気にガタガタッといってしまうことだって有り得るのだ。現状のままでは 「いずれダメになる」 という強い危機感のもと、イチかバチかで打って出たようなもので、確かな勝算があっての移転ではないというところに、一抹の不安がある。
その思いは社員みんなで共有しているから、新社屋移転といっても、あまり浮かれたような気分はない。
身も心も会社に捧げ尽くすという時代でもないけれど、さすがに今日くらいは僕も、イチ営業マンとして会社のために何ができるか考えてみようと、珍しく殊勝な気持ちになっている。
とりあえず飲みながら。
こういうときは、すこし酔っぱらった方が良いアイデアが浮かぶのさ。