昨日は暗くなってからチェックインしたので気がつかなかったけれど、朝、起きてカーテンを開けると、すぐそこに海が見える。立ち昇る朝靄の中を行き交う船。その向こうに富士山。
えらく贅沢な気分になるが、べつに高級なホテルってわけじゃない。朝食付きで一泊一万円もしない、古き良き昭和の宿だ。
さあ、朝風呂に入って、朝飯を済ませ、今日は島をぐるりと一周してみよう。
ちょっと走っただけで、まるで宮崎駿の映画に出てきそうな風景に出会える。
入園無料の 〔大島公園 動物園〕 は、意外と言っちゃあナンだが結構充実していて、思った以上に時間を過ごしてしまった。
島の動物たちは皆どこか優しげで、穏やかな顔をしているように見えたのは、気のせいだろうか。
ミセスにハンドルを譲り、さあ、ドライブを続けよう。
景勝地 〔筆島〕 と、
波浮 (はぶ) の港。
川端康成の小説 〔伊豆の踊子〕 の舞台にもなっているそうだが、悪しからず、僕は読んだことがない。
ここで昼飯。予約をしておいた 〔港鮨〕 で、またもや地魚の寿司と、
フンパツして、伊勢海老の天丼。
大事なことなので、も一回言います。「伊勢海老の天丼」 です。身も美味かったが、味噌汁がまた絶品だった。
食後のデザート (?) は 〔鵜飼商店〕 の、揚げたてのコロッケとメンチカツ。
満腹になって、もうひとっ走り。
波浮港から元町方面へ向かっていると、突然奇景が現れる。
気の遠くなるような長い年月をかけて降り積もった火山灰などの堆積物が、切り立った崖に美しい縞模様を描き出している。「大地の年輪」 とでも言うべき地層の切断面。
人のいない弘法浜。
誰もいない岡田港。
たっぷりと島の魅力を味わったところで、レンタカーを返却。
この日の夜は、現地のガイドブックに載っていた 〔魚味幸〕 で。「うみさち」 と読む。
地元の人たちが集う居酒屋といった風情の店で、「なにか、地のものを・・・」 と頼んだら、はんば海苔と明日葉を炒めたものを出してくれた。なんでもない惣菜なのだが、これがめっぽう旨い。
さっぱりとした脂がのった、サビ (クロシビカマス) の一夜干し。
めぼう (イカの口)。
もちろん、刺身は外せない。
塩辛と、瓶ビール一本、焼酎三杯、だったかな。
最後に茶そばで〆たが、でも、これで終わりじゃない。宿に戻れば、昼間 〔シャロン洋菓子店〕 で買っておいた 〔大島牛乳プリン〕 が冷えている。じつは昨日、買おうと思って店に立ち寄ったのだが売り切れてしまっていたので、今日は取り置きをしておいてもらったのだ。
酔って火照った口中に、なめらかなプリンが心地よくすべり込んでゆく。
これでひとっ風呂浴びて、布団に寝っ転がったら、もう、起きていられるはずもない。あっという間に大島三日目の朝を迎えることになる。 (もうちょっとつづく)