ようやく青空が広がったので、カメラ片手に鎌倉へ。
藤沢から江ノ電に乗り、まずは長谷で下車して、海を見つつ〔力餅家〕に寄る。鎌倉で最も古い和菓子舗のひとつ。小さな店だが、その佇まいには老舗の風格が漂う。
ここで名物の〔力餅〕を二つ買う。求肥を漉し餡で包んだだけの、素朴な味わいのものだが、わけもなく「鎌倉だなぁ」と思えてしまうから不思議だ。
これを食べ歩きながら、由比ガ浜通りを行き、今日の昼はここにしようと決めていた〔つるや〕へ。
空いていればそのまま入ってしまおうと思ったのだが、案の定、満席。一時過ぎの予約を入れて出直すことにして、そのまま歩いて鎌倉方面へ向かう。
御成り通りの〔小川軒〕で大好物のレーズンウィッチを買い、鶴岡八幡宮を経て、杉本寺、報国寺へ。
雨上がりの初夏の鎌倉は、どこもむせかえるような緑で覆われている。
そして、蝉の声、三味線の音、畳屋の藺草や、天ぷら屋の油の香り…
肌にまとわりつく湿気とともに、どこからともなく匂い、聞こえてくる、濃厚な気配を楽しむ。
二時間ほど歩き回り、少々へたばってきたところで、ようやく〔つるや〕の時間。
かの川端康成も度々来店したという、鰻の老舗。
注文を受けてからさばき、蒸し、焼くので、出来あがるまでにたっぷり三、四十分はかかる。瓶ビールを一本頼み、それをちびちびと飲みながら、ひたすら待つ。
やがて、腹の虫も待ちきれなくなったちょうどその頃、旨そうな匂いとともに、創業当時から使用しているという年季の入った鎌倉彫の器が運ばれてくる。思わず顔がほころぶ一瞬。
ここの鰻は身がしっかりしていて、柔らかすぎず、辛口のタレもさっぱりと後味が良い。好みは人それぞれあるだろうが、僕にとっては、鰻といえば一も二もなくこの〔つるや〕。たまの贅沢である。
ほどよく疲れて帰宅。風呂に入り、〔小川軒〕のレーズンウィッチでウイスキーを飲みながら、この日記を書く。